創業者メッセージ
私はかつて出張の合間にドイツのデュッセルドルフ近郊にあるネアンデルタールという小さな駅に立ち寄ったことがあります。そこにはネアンデルタール人の化石が初めて発見された石切り場跡があります。人里離れた山の中に、ちょっとした野原のような場所もあり、小川も流れていて、ネアンデルタール人が暮らしている姿を少し想像できるような場所でした。ネアンデルタール人の埋葬地跡からは大量の花粉が発見されており、彼らが死者に花を手向ける優しい心を持っていたとする説をむかし本で読み、感動したものでした。残念ながら今ではその説は否定されているようですが、それでも私は彼らが心優しい者たちで、野原で花を摘んでいる姿を想像したいと思っています。そして、我々現代の人類もまたそうありたいと思います。
ケミオ株式会社は、独自の機能性化学品によってエネルギー、環境、食糧、水、ヘルスケアの問題解決に少しでも貢献するという目的で立ち上げられたものですが、その中から派生した水除菌ポリマー切り花用という商品を2025年から発売しております。これは入れておくだけで花瓶の水の中を除菌し、水替えしなくてもきれいな状態を保て、花の延命にも寄与するというものです。入れっぱなしで繰り返し長期間使えるという手軽さがあります。切り花というのは、エネルギーや食糧のように人間が生きていくために不可欠のものとは言えず、本来ケミオが対象とすべきものではないかもしれません。しかし、花を使った実験を行ううちに、花の、生きているものの美しさに圧倒されるようになりました。水を基本として成り立っているものの透明感、人工では出し切れない香り。多様な形、色、匂いなど、ある意味奇妙な花について考えを巡らせるうち、この世界の不思議にまで思いを馳せることができ、花を「聞く」ことによって静かにいろいろなことを教えられることも知りました。そうしているうちに、生きた花を身近に置いて手軽に楽しめるようにすることにも価値があると思うようになりました。
生きることは幸福なことばかりではありませんが、少なくともこの世界には美しいものがあって、それだけでも生きる価値はある。宇宙の中には無数の世界が存在するのでしょうが、我々はたまたま、こんな家が建ち、こんな車が走り、そしてこんな花の咲くこの世界に生まれました。どうせならこの世界を楽しみましょう。
ケミオは創業以来、電池、カーボンニュートラル関連技術あるいは医療機器開発などに関する受託研究を主な事業としてきました。それに加え、今後は切り花を手軽に楽しめるための商品の製造・販売にも力を入れていきたいと思います。
ケミオ株式会社 代表取締役社長 澤 春夫 (理学博士)